2026-06-15

海外の王室と比べてみる ―― 「海外もやっている」は、根拠になるのか

海外の王室と比べてみる ―― 「海外もやっている」は、根拠になるのか

「海外の王室では、女性も国王になっている」「男女平等に、ルールを変えた国も多い」「だから日本も、女性・女系を認めるべきだ」。女性天皇・女系天皇の議論では、こうした主張がよく出てきます。たしかに、海外には女王もいるし、ルールを変えた国もたくさんあります。でも、それは日本と同じ土俵で比べられる話なのでしょうか。


各国は、たしかに継承のルールを変えた

まず事実から確認します。ヨーロッパの王室では、近年、継承のルールを次々と変えてきました。スウェーデンは1980年、世界で初めて「男女を問わず、第一子が継ぐ」ルールにしました。それまで第一位だった弟を抜いて、姉が王位継承者になっています。イギリスは2013年に法改正(2015年施行)を行い、長男が優先されるルールをやめて、生まれた順に継ぐ形へ改めました。このほか、オランダ・ノルウェー・ベルギー・デンマークなども、同じように改正しています。つまり「男女平等に変えた」というのは、事実です。

各国の継承ルールを、並べてみると


でも、根本が違う①:海外は「女系(双系)」を認めている

ただ、これらの国の王室は、もともと女系、つまり母を通じて王につながる継承も、当たり前に認めています。父方をたどっても王に行きつかない人でも、母方でつながっていれば継げる、ということです。女王が即位し、その子が継げば、それが女系です。なお、「母方だけでつながる純粋な母系王朝」があるわけではなく、父方でも母方でも、どちらでもよい=双系、という意味です。

そして女系をはさむと、多くの場合、王家の「家名」が変わります。女王の子は、父方の家名を名のるからです。たとえばイギリスでは、ヴィクトリア女王のあと、王家の名が「サクス=コバーグ=ゴータ家」に変わりました。女王の子が、父(ドイツ出身の公子)の家名を継いだためで、これが「女系をはさむ」ということです。(なお、そのドイツ風の名は、第一次世界大戦中の1917年に、今の「ウィンザー家」へと改称されました。つまりウィンザー朝の始まりは、エリザベス女王ではなく、その祖父ジョージ5世の代です。)こうして海外では、家名が移り変わるのが、ごく普通のことなのです。

家名が変わる海外 ―― 一度も変わらない日本


でも、根本が違う②:日本は、一度も女系を経ていない

一方、日本の皇室は、初代から今まで、一度も女系をはさんでいないとされます。記録に残る限り、すべて男系(父方をたどれば必ず過去の天皇に行きつく)で受け継がれてきました。その結果、王朝が一度も変わっていない。これは世界で日本だけで、現在まで続く王家としては世界最古とされ、ギネス世界記録(「最古の王家」)にも認定されています。神話を含めれば約2600年、確実な記録だけでも1500年以上、同じ一つの王朝が続いているのです。

海外が「家名の変わる王室」だとすれば、日本は「一度も家名の変わらない、唯一の王室」です。そもそもの成り立ちが、まったく違います。そして何より、現在まで続いている王朝で、二千年以上のものは、海外には一つもありません。続いた長さが、文字どおり桁違いなのです。本来、比較の土俵にすらのっていない、そう言ってもいいかもしれません。

続いた長さ ―― 比べると「桁違い」


海外にも「男系を貫いた」例はある ―― フランス

公平に言えば、海外がすべて女系というわけではありません。代表例がフランスです。フランスの王家は、「サリカ法」という決まりのもと、女系を一切認めず、男系だけで続きました。初代ユーグ・カペーから数えて、約800年以上。直系が絶えると、傍系の男系(ヴァロワ家、ブルボン家)に引き継いで、血統を守りました。これは、日本の考え方にとても近いやり方です。

よく「側室の制度がなければ、男系はいずれ途絶える」と言われます。たしかに、かつての日本は、側室の子で男系を保った時代もありました。けれどフランスは違いました。基本的に、庶子(側室の子)を王位につけることなく、正式な跡継ぎ(嫡出)の男系で、800年以上つないだのです。直系が絶えたときは、なんと約300年もさかのぼる遠い親戚の男系(アンリ4世)を立ててでも、男系を守りました。

そしてフランスの王政が終わった理由も、「男子が生まれなかったから」ではありません。フランス革命という、政治の事件で倒されたのです。継承そのものに、行き詰まったわけではありません。つまりフランスは、「側室がなければ男系は続かない」とは限らないことを示しています。直系が絶えても、傍系の男系で受け継ぐ発想は、日本でいう案②(旧宮家の男系男子を迎える)と同じです。

ただ、注目したいのは、その「約800年」という長さです。男系を貫いた、ヨーロッパ屈指の長寿王朝でさえ、日本の半分にも届きません。男系で1000年を超えて続いた例は世界にほとんどなく、まして二千年は、やはり日本だけなのです。


「女王がいる」と「女系でよい」は、別の話

混同されがちな点が、もう一つあります。「海外には女王がいる」というのは事実です。けれど、海外の女王は、女系を認める制度の中の女王です。女王の子が、当たり前に次を継ぎます。日本にも、過去に女性の天皇は8方おられました。ただし、いずれも男系の女性で、次の男系男子へつなぐ「中継ぎ」であり、女系を生まないように位置づけられていました。同じ「女性の君主」でも、中身がまるで違うのです。ですから「海外に女王がいるから、日本も女系でよい」という理屈は、話が飛んでいます。


継承資格者が増えすぎる海外、絞られてきた日本

あまり知られていない違いが、継承の資格を持つ人の「数」です。イギリスでは、王位継承の資格を持つ人が、なんと数千人にのぼるとされます(試算によっては4,000〜5,000人とも言われます)。1701年の法律で、ある一族の子孫すべてに資格が広がったためで、中にはイギリス国民ですらない外国籍の人も含まれます。なぜ、こんなに増えるのか。女系(双系)を認めると、父方にも母方にも資格が広がり、世代を追うごとに、資格を持つ人がねずみ算式にふくらんでいくからです。

日本は男系に限ることで、継承資格を持つ方が、自然と絞られてきました(もっとも、今は絞られすぎているのが問題なのですが)。数千人が資格を持つ状態と、ごく限られた方が継いでいく状態。どちらに「重み」や「ありがたみ」を感じるか、これも考えてみる価値があります。

継承の資格を持つ人は、何人いる?


同じ「男女平等」でも、スタート地点がまったく違う

海外の改正は、もともと女系を認めている国が、その中で「男女平等の長子継承」に整えたものでした。日本で同じことをすると、それは史上はじめて女系を認めること、つまり二千年続いた連続が、そこで切れることを意味します。同じ「男女平等」という言葉でも、スタート地点がまったく違う。だから「海外もやっている」は、日本にそのまま当てはめられないのです。

前提が違うから、単純には比べられない


「世界に合わせるべきだ」という別の見方

もちろん、反対の意見もあります。世界の王室が時代に合わせて変えているのに、日本だけ取り残されるのはおかしい。男女平等という普遍的な価値は、日本にも当てはめるべきだ。こうした声です。これらにも、一理あります。男女平等は、現代の大切な価値です。ただ、皇室の継承は「平等か不平等か」だけで割り切れる問題ではありません。二千年続いた連続性という、お金でも多数決でも買えない価値を、どう考えるか。そこが問われています。


「変えた国」ではなく、「変えずに続いた稀さ」に目を向けたい

そもそも、現代の海外の王室と比べても、続いてきた歴史の長さが、文字どおり桁違いです。筆者は、これはもう比較にならない、同じ土俵に載せること自体が、そもそも難しいのではないかと感じています。そのうえで筆者は、海外と比べるなら、「変えた国々」ではなく、「変えずに続いた、その稀(まれ)さ」にこそ目を向けるべきだと考えています。

世界中の王室が家名を変え、王朝を交代させてきた中で、日本だけが、一度も切らずに続けてきました。これは、世界のどこにもない、日本だけの「財産」です。「海外もやっているから」と安易に横並びすることは、その財産を、自分たちの代であっさり手放すことにつながりかねません。比べることで見えてくるのは、むしろ日本の皇室の、世界に類のない特別さではないでしょうか。


参考・出典