「案②」を掘り下げる ―― 旧宮家の男系男子を「養子」に迎えるとは

2026-06-15

「案②」を掘り下げる ―― 旧宮家の男系男子を「養子」に迎えるとは

前回は案①(女性皇族が結婚後も皇室に残る)を取り上げました。今回はもう一方の柱、案②――「旧宮家の男系男子を養子に迎える」案を掘り下げます。

こちらは、男系継承を重んじる立場が「本命」と位置づける案です。中身と、その強み・弱みを順に見ていきます。

そして2026年6月、この案も「立法府の総意」として改正案にまとまり、閣議決定されました。ただし、その条件は当初の想定よりもかなり絞られた形になっています。そこも最後に見ていきます。


案②のおさらい

戦後の1947年、11の宮家が皇室を離れました(皇籍離脱)。その子孫である旧宮家の男系男子を、今ある宮家が養子に迎える――これが案②です。

新しく宮家を作るのではなく、既存の宮家に養子として入っていただく形が想定されています。

案②の仕組み ―― 旧宮家の男系男子を、いまある宮家が養子に迎える


「旧宮家の活用」には2つのやり方があった

「旧宮家に皇室へ戻ってもらう」という発想には、以前から大きく2つのやり方がありました。

  • 旧案:当主とご家族に、家ごとそのまま皇室へ戻っていただく
  • 案②:旧宮家の男系男子の個人を、養子として迎える

家ごと戻す案は、対象が広く、国民の理解という点でハードルが高いものでした。案②は、そこを**「養子」という先例のある方法に絞り込んだ、いわば改良版**と言えます。


案②は、安定的な皇位継承に「寄与する」

ここが、案①との最も大きな違いです。

案①(女性皇族が残る)は、額面どおりでは皇位を継げる人を増やしません。一方、案②は男系男子の受け皿そのものを増やすため、安定的な皇位継承に直接つながります。

今、若い世代の男性皇族は悠仁親王殿下おひとりです。悠仁親王殿下が皇位を継がれることは、ほぼ確定的といえます。

ただ、このままの皇室の構成では、皇統が続くかどうかが、事実上おひとりの将来に集中してしまいます。そうなると、将来お妃となられる方に、「男子を」という極めて重い期待とプレッシャーがかかりかねません。これは、どなたにとっても過酷なことです。

案②によって男系男子が複数いれば、その重圧を分散し、和らげることができます。万が一の事態にも備えられます。皇室のどなたかおひとりに皇統の重みを背負わせないためにも、案②は今考えられる、現実的な最良の備えだと筆者は考えます。

案②は受け皿を増やし、おひとりへの集中を和らげる


案②の「現実的な強み」(実務面)

継承の安定という大きな意義に加えて、案②には実務面の強みもあります。

① 皇室典範の改正だけで実現できる

今の皇室典範は、第9条で皇族の養子を禁じています。逆に言えば、この条文を改めれば実現可能で、憲法改正のような大がかりな手続きは要りません。

② 「誰を迎えるか」を皇室側が決められる

復帰する方の選定は、現在の皇室(宮様方)が判断されるのが自然です。部外者が「この人を」と選ぶことは、現実的に考えにくい。皇室の側が、ふさわしい方を見極められます。

③ 皇族としての所作を、宮様が導ける

養子として迎えれば、皇族としての振る舞いやあり方を、現在の皇室が直に導くことができます。

④ 予算面のハードルが低い

新しい宮家を立てると、皇族費などの予算が新たに必要になります。案②は既存の宮家に入る形なので、その負担を抑えられます


立場による見方

  • 保守(男系重視):先例に則った本流の案。日本の皇統は、必ずしも直系だけでなく、傍系の男系をたどってでも男系を守ってきた歴史があります。だから案②は伝統に沿う、どうしても通したい案だ、と考えます。
  • 女性・女系に前向きな立場(左派):案②には消極的で、女性天皇・女系天皇への議論を進めたい。案②は、そのための時間稼ぎ・ガス抜きだと見る向きもあります。

問題点 ―― 「国民が認めるか」

最大の論点は、約80年前に民間人となり、ずっと一般国民として暮らしてきた方を、皇族として国民が受け入れられるかです。

旧宮家と今の皇室は、共通の祖先までさかのぼると600年ほど離れているとも指摘されます。

この点に配慮し、案②では迎えたご本人には皇位継承権を与えず、その方に男子が生まれた場合、その子(生まれながらの男系男子)に継承権――という設計になりました。

案②の「強み」と「残る課題」


改正案での案②(2026年6月)

2026年6月、この案②も「立法府の総意」として改正案にまとまり、閣議決定されました。ただし、その条件は次のように定められています。

  • 対象は、1947年に皇室を離れた旧11宮家の子孫の男系男子
  • 迎え入れるのは、配偶者や子のいない「15歳以上」の男子に限られる見込み(未婚で、15歳未満は対象外)。15歳未満を外すのは、本人の自由な意思を尊重するためとされます(民法でも、15歳未満の養子縁組には法定代理人の同意が必要です)。
  • 養子ご本人は、皇位継承資格を持たない。ただし、その方に生まれた男子は、生まれながらの男系男子として継承資格を持つ(現行の皇室典範のまま)。
  • あわせて、「30年ごとに見直す」という規定も盛り込まれました。

「旧宮家の男系男子」という当初の広い想定から、「未婚・妻子なし・15歳以上」へと、対象がかなり絞り込まれた――ここが、今回の改正案の大きなポイントです。


筆者の考え

ここからは、筆者の考えです。

今回の改正案で、案②の入り口は思いのほか狭く絞られました。「配偶者や子のいない、15歳以上の男子」に限られたためです。

もともと男系継承を重んじる側が想定していた形は、これより広いものでした。たとえば、生まれたばかりの乳児を養子に迎える(民間でもよくある養子縁組の形)、あるいは、すでに結婚してお子さまのいる方に、一家ごと皇室へ入っていただく――そうした選択肢も視野に入っていたはずです。既婚の方まで含められれば、「皇族はどうしても結婚のハードルが上がる」という難しさも、その分やわらぎます。

それが「未婚・15歳以上」に絞られた背景には、参議院の議席構成などもあり、男系を重んじる側が左派の主張を一定受け入れざるを得なかった――そういう力関係もあったのではないか、と筆者は見ています(ここは筆者の推測です)。

また、対象を「15歳以上」に限ったことには、気がかりな面もあります。もし乳児のうちに迎えるのであれば、幼い時期を皇室の中で守られて育つことができます。しかし入り口を15歳以上とすると、それまでの幼少期を民間で過ごす間に、「将来、皇室に入るかもしれない」と早くから注目され、質の悪い報道や取材に追い回される――そうした事態も起こりえます。それが重荷となって、いざというときにご本人がかえって皇室に入りにくくなる。そんな可能性も、頭の片隅に置いておく必要があると筆者は考えます。

保守の側から見れば、これは左派に狭められた入り口ではあります。それでも、これから30年の間に養子の実績を一つでも作り、十分な皇族数の確保につなげていく――そこを目指すべきだろう、と筆者は考えます。入り口が狭くても、開いたこと自体には意味があります。

そしてもう一つ。今回、現行の皇室典範はそのままにしておいて、「養子に迎えた方のお子さまが男子なら、生まれながらの男系男子として継承資格を持つ」という形にした点――これは、なんとも政治家らしい、うまいやり口だと思います。継承のルールそのものには手を付けず、それでいて将来の男系継承への道は残す。角を立てずに実を取る、巧みな設計だと、筆者は受け止めています。


まとめ

  • 案②=旧宮家の男系男子を、今ある宮家が養子に迎える案。「家ごと復帰」より対象を絞った改良版。
  • 案①と違い、男系男子の受け皿を増やすので、安定的な皇位継承に寄与する。悠仁親王殿下おひとりへの集中(将来のお妃への重圧)を和らげ、万一にも備えられる。
  • 皇室典範(第9条=養子禁止)の改正で実現できる。強み:選定は皇室側/所作も指導できる/新宮家を作らず予算を抑えられる。
  • 2026年6月、改正案が閣議決定。対象は「未婚・妻子なし・15歳以上」に絞られた。30年ごとの見直し規定つき。
  • 養子ご本人に継承権はなく、生まれた男子(生まれながらの男系男子)に継承権。現行典範に手を付けない設計。
  • 論点は「80年民間人だった方を国民が認めるか」。筆者は、覚悟ある旧宮家の男系男子は必ずいる、と考えます。

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