2026-10-03

旧宮家から養子を迎えるとき、儀式はあるのか ―― 報道された「新たな儀式」と、皇族になる手続き
皇族が結婚するときには、結婚の儀をはじめとする一連の儀式があります。養子として新しく皇族になる方にも儀式がある、というのは、多くの人にとって自然に感じられることかもしれません。そうしたなか、2026年9月18日に共同通信が次のように報じました。
改正皇室典範で可能となる「旧11宮家の男系男子の養子縁組」を巡り、縁組が成立し、養子が皇族となったことを内外に示す新たな儀式の実施を宮内庁が検討していることが18日、関係者への取材で分かった。 ――共同通信「養子皇族の成立に儀式検討 改正皇室典範で宮内庁」(2026年9月18日)
記事によると、宮内庁は、民間から皇族妃を迎える「結婚の儀」などを参考に、一連の儀式の在り方を決める方針だといいます。では、そもそも養子はいつ、何によって皇族になるのでしょうか。儀式を行えば皇族になるのでしょうか。答えは、縁組の時です。これは法律で決まっています。儀式は、皇族になったことを「示す」ものであって、身分をつくるものではありません。 結婚の儀や立皇嗣の礼と同じ考え方です。条文と、宮内庁が記録している戦後の儀式の前例から、順に確かめていきます。
報道で分かっていること、分かっていないこと
報じられたのは、宮内庁が、養子が皇族となったことを内外に示す新たな儀式の実施を検討しているということです。民間から皇族妃を迎える「結婚の儀」などを参考に、一連の儀式の在り方を決める方針だといいます。報道では、誕生時に皇族でなかった人が養子として皇族となった前例はないとしています。また宮内庁は、養子縁組について「当事者の自由な意思が尊重されなければならない」とし、対象者の把握を慎重に進めているといいます。
一方、分かっていないのは、儀式の名前、内容、規模です。国事行為として行うのか、皇室の行事として行うのかも、いつ行うのかも、まだ分かっていません。報道は「関係者への取材で分かった」というもので、宮内庁が発表したものではないため、内容は「報じられた」段階にとどまります。
養子は、縁組の時に皇族になる
2026年7月に成立した改正皇室典範は、10月24日に施行されます。改正によって新しく加わる第6章「養子皇族男子」の第38条は、次のように定めています。
親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王(皇嗣及び皇嗣妃を除く。)は、皇室会議の議を経て、この法律による皇族男子であつた者の嫡男系嫡出の子孫である現に皇族でない年齢十五年以上の男子であつて、配偶者及び子がないものに限り、養子とすることができる。 ――皇室典範等の一部を改正する法律 第1条(改正後の皇室典範 第38条第1項)
縁組による養子は、当該縁組の時から、皇族となる。 ――同(改正後の皇室典範 第38条第3項)
養親になれるのは、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王です。ただし皇嗣と皇嗣妃は除かれ、天皇・皇后も挙げられていません。養子になれるのは、皇族男子だった者の男系の子孫で、今は皇族でなく、15歳以上で、配偶者も子もいない男子です。手続きとしては皇室会議の議を経る必要があり、皇族になる時点は縁組の時とされています。つまり、養子が皇族になるかどうかを決めるのは、皇室会議の議を経た縁組であって、儀式を行ったかどうかではありません。
皇族以外の人が皇族になる道が、一つ増える
養子の制度は、皇族以外の人が皇族になる道を一つ増やすものです。現行の皇室典範は、皇族以外の人が皇族になる場合を、はっきり限っています。
皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。 ――皇室典範 第15条
これまで、皇族以外の人が皇族になる道は、結婚だけでした。改正法は、この第15条に「第三十八条第三項の規定による場合」を加えます。10月24日からは、養子という二つ目の道ができることになります。

改正法は、戸籍の法律も改めています。天皇及び皇族以外の男子が養子となって皇族になったときは、その人は戸籍から除かれます。皇族の身分に関する事項は、戸籍ではなく皇統譜に登録されます(皇室典範第26条「天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登録する」)。養子制度の仕組みそのものは、旧宮家の養子案は、どう機能するのかで詳しく扱いました。これまで皇族が養子を迎えられなかった理由は、なぜ皇族は養子を迎えられないのかにまとめています。
皇室典範が定める「儀式」は二つだけ
では、儀式はどこで決まっているのでしょうか。現行の皇室典範が、儀式として名前を挙げて定めているのは、次の二つです。
皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う。 ――皇室典範 第24条
天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。 ――皇室典範 第25条
結婚の儀も、立太子の礼も、皇室典範には書かれていません。 結婚について皇室典範が定めているのは、手続きだけです。たとえば、立后と皇族男子の婚姻については、次のように定められています。
立后及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する。 ――皇室典範 第10条
結婚の儀をはじめとする儀式は、法律で義務づけられたものではなく、そのつど行われてきたものです。養子の儀式も、法律で決まっているわけではありません。だからこそ、宮内庁が「在り方を決める」と報じられているのです。
皇族妃を迎えるときの儀式
報道で「参考」とされた、民間から皇族妃を迎えるときの儀式を見ておきます。宮内庁は、結婚に関する儀式を次のように説明しています。
| 儀式 | 宮内庁の説明 |
|---|---|
| 納采(のうさい) | 一般の結納にあたるもの |
| 告期(こっき) | ご結婚の期日を告げること |
| 結婚の儀 | お二方が、賢所において結婚の誓いをされる儀式 |
| 朝見の儀(ちょうけんのぎ) | 立太子、ご結婚などに際し、天皇・皇后にごあいさつをされる儀式 |
| 供膳の儀(くぜんのぎ) | ご結婚されたお二方が初めて食事をご一緒にされる儀式 |
| 三箇夜餅の儀(みかよのもちのぎ) | ご結婚当夜から3日間にわたって御殿にお祝いの餅を供えられる儀式 |
| 宮中饗宴の儀 | ご即位、立太子、ご結婚などを披露され、祝福を受けられる祝宴 |
このうち、報道が参考にするとした「結婚の儀」は、賢所で誓いをする儀式です。「朝見の儀」は天皇・皇后にあいさつをする儀式、「宮中饗宴の儀」は披露と祝福の祝宴です。養子の場合は結婚ではないので、結婚の誓いにあたる部分は、そのままでは当てはまりません。一方で、天皇・皇后へのあいさつ(朝見の儀)や、披露と祝福(宮中饗宴の儀)という要素は、養子の場合にも通じるところがあります。
同じ儀式でも、国事行為かどうかは立場で分かれる
儀式には、国事行為として行われるものと、皇室の行事として行われるものがあります。宮内庁は、日本国憲法の施行後に行われた主な儀式を記録しています。結婚と成年式について並べると、はっきりした違いがあります。

皇太子の結婚(昭和34年・平成5年)では、結婚の儀・朝見の儀などが「国事行為たる儀式」として行われました。親王の結婚(昭和39年の正仁親王、昭和55年の寬仁親王、昭和59年の憲仁親王、平成2年の文仁親王)については、宮内庁の記録は「皇居において行われました」とだけあり、国事行為とは書かれていません。徳仁親王の成年式(昭和55年)について、宮内庁は「皇太子としての成年式ではないので、国事行為たる儀式とはされませんでした」と記しています。
同じ結婚の儀、同じ成年式でも、皇太子かどうかで国事行為になるかどうかが分かれていました。養子の儀式が国事行為になるのか、皇室の行事になるのかは、報道からは分かりません。ただ、前例に照らせば、儀式の位置づけは、その方の立場に応じて決められてきたことが分かります。
「内外に宣明」する儀式の前例
報道にある「内外に示す」という言葉には、前例があります。宮内庁の記録では、立太子の礼は「皇太子であることを内外に宣明される」儀式、立皇嗣の礼は「皇嗣であることを内外に宣明される」儀式と説明されています。ここで大事なのは、儀式の前に、すでに地位は決まっていたことです。

秋篠宮皇嗣殿下は、天皇陛下が即位された令和元年(2019年)5月1日から、皇位継承順位第1位の皇嗣です。立皇嗣の礼が行われたのは、1年半後の令和2年(2020年)11月8日でした。そのとき天皇陛下は、次のように述べられています。
本日ここに、立皇嗣宣明の儀を行い、皇室典範の定めるところにより文仁親王が皇嗣であることを、広く内外に宣明します。 ――立皇嗣宣明の儀 天皇陛下のおことば(令和2年11月8日)
「皇室典範の定めるところにより」皇嗣である方を、「広く内外に宣明」する。地位は法律で決まり、儀式はそれを示すという形です。報じられた養子の儀式も、この考え方に沿えば、縁組によってすでに皇族となった方を、内外に示す儀式という位置づけになります。
儀式の検討への否定的な論評と、高森明勅氏のコメント
報道のあと、儀式の検討に否定的な論評も出ています。『女性自身』(2026年9月25日)は、神道学者で皇室研究者の高森明勅氏のコメントを紹介しています。高森氏は、報道への反発の背景として、儀式によって養子制度そのものが正当化され、固定化されるのではないかという懸念がある、と説明しています。
一方で高森氏は、民間の人が皇族となるにあたっては、天皇陛下へのあいさつである「朝見の儀」や宮中三殿への拝礼など、何らかの儀式は必要になるだろうとも述べています。そのうえで、それが一般の婚姻による皇族参入以上の扱いとなれば「均衡を欠く」とし、儀式のあり方や規模の均衡を慎重に見極める必要がある、としています。儀式に否定的な論評の中でも、儀式そのものは必要という点と、規模は結婚による皇族参入と釣り合うようにという点が述べられていることは、押さえておきたいところです。
儀式は必要か、簡素にすべきか
養子の儀式については、見方が分かれます。一つは、儀式は必要だという見方です。新しく皇族になった方を、天皇・皇后にあいさつし、国民に披露する。皇族妃を迎えるときに結婚の儀や朝見の儀があるのと同じように、養子として皇族になる方にもそうした場がなければ、かえって不自然だと考えるものです。
もう一つは、簡素にすべきだ、あるいは慎重であるべきだという見方です。養子制度は初めての仕組みです。上で紹介したように、儀式によって制度が正当化され、固定化されることを心配する声もあります。どちらの見方でも、皇族になるのは縁組によるもので、儀式によるものではないという点は変わりません。議論の対象は、あくまで「どう示すか」です。
筆者の考え ―― 儀式は自然だが、身分をつくるのは縁組
筆者は、養子として皇族になる方にも、それを示す儀式があるのが自然だと考えます。皇族妃を迎えるときには、結婚の儀があり、朝見の儀があり、宮中饗宴の儀があります。皇嗣には立皇嗣の礼がありました。新しく皇族になる方、あるいは新しい立場になる方を、天皇・皇后に、そして国民に示す場は、皇室の中でずっと大切にされてきました。養子の場合だけその場がないとすれば、かえってご本人を宙ぶらりんな立場に置くことになりかねません。
そのうえで、確かめておきたいのは、儀式は身分をつくるものではないということです。養子は、皇室会議の議を経た縁組の時に、法律によって皇族になります。儀式は、その事実を内外に示すものです。立皇嗣の礼が、すでに皇嗣であった秋篠宮殿下について「皇室典範の定めるところにより」と宣明したのと同じです。儀式の中身や規模は、これから決められていきます。そのときの手がかりになるのは、結婚の儀や立太子の礼、立皇嗣の礼として積み重ねられてきた前例です。報道に一喜一憂するのではなく、条文と前例に照らして見ていきたいと思います。
参考・出典
- 養子皇族の成立に儀式検討 改正皇室典範で宮内庁|共同通信(西日本新聞me掲載) ―― 2026年9月18日配信。同じ記事は東京新聞・中国新聞などにも掲載
- 皇室典範等の一部を改正する法律案|衆議院 ―― 第1条(改正後の皇室典範第15条・第38条)、第3条(戸籍の法律の改正)、附則第1条(施行期日)
- 皇室典範|e-Gov法令検索 ―― 第10条、第15条、第24条、第25条、第26条(いずれも現行)
- ご結婚に関する用語|宮内庁 ―― 納采、告期、結婚の儀、朝見の儀、供膳の儀、三箇夜餅の儀、宮中饗宴の儀
- ご大喪・ご即位・ご結婚などの行事|宮内庁 ―― 日本国憲法施行後の主な儀式の記録(結婚、成年式、立太子の礼、立皇嗣の礼)
- 秋篠宮家|宮内庁 ―― 立皇嗣の礼(令和2年11月8日)
- 立皇嗣宣明の儀の天皇陛下のおことば(令和2年11月8日)|宮内庁
- 【旧宮家養子に新儀式】宮内庁が検討報道に反発の嵐…|女性自身 ―― 2026年9月25日掲載。高森明勅氏のコメント(報道への反発の背景、儀式の必要性と「均衡」について)



