2026-08-08

連載「皇室の基礎知識第6回(全12回)

親王・内親王・王・女王とは何か ―― 皇族の身分を整理する

親王・内親王・王・女王とは何か

「悠仁親王殿下」「愛子内親王殿下」。皇室の報道で、よく耳にする呼び方です。

その一方で、「○○女王殿下」という呼び方もあります。この違いは、いったい何なのでしょうか。

この記事では、親王・内親王・王・女王という4つの呼称の違いを、皇室典範にもとづいて整理します。連載「皇室の基礎知識」の第6回です。


皇族には、4つの呼称がある

まず、全体像です。皇族の呼称には、次の4つがあります。

  • 親王(しんのう)
  • 内親王(ないしんのう)
  • 王(おう)
  • 女王(じょおう)

大切なのは、この4つがすべて皇族であるという点です。違うのは「皇族かどうか」ではなく、身位(しんい)――つまり皇族としての身分の区分です。

では、何によって区分されるのでしょうか。条文を読むと、二つの条件が書かれています。


条文は、こう定めている

皇室典範第6条の全文です。短い条文ですが、ここに身位のすべてが書かれています。

嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を内親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を、女を女王とする。 ――皇室典範 第6条

条件は二つあります。世代と、血のつながり方です。


① 世代 ―― 親王・内親王とは

まず、世代です。

  • 天皇の子(皇子〈こうし〉) ―― 男は親王、女は内親王
  • 天皇の孫(皇孫〈こうそん〉) ―― 男は親王、女は内親王

つまり、天皇からみて子・孫の世代にあたるのが、親王・内親王です。天皇との血のつながりが近い世代、と考えると分かりやすいでしょう。


王・女王とは

一方、それより下の世代――曾孫(ひまご、三世)以下は、男を、女を女王とします。

言い換えれば、天皇からみて曾孫より先の世代になると、呼称が「親王・内親王」から「王・女王」に変わる、ということです。


② 血のつながり方 ―― 「嫡男系嫡出」

ここが、世代と並ぶもう一つの条件です。条文は、ただ「皇孫」「三世以下の子孫」と書いているのではありません。「嫡男系嫡出の」という限定を、わざわざ付けています。

  • 嫡出(ちゃくしゅつ) ―― 婚姻関係にある父母の間に生まれたこと
  • 嫡男系(ちゃくなんけい) ―― 父をたどっていくと天皇にたどり着く血筋であること

たとえば、内親王殿下がご結婚されてお子さまが生まれたとします。母をたどれば天皇につながりますが、父をたどってもつながりません。この場合、第6条の「嫡男系嫡出」に当てはまらないため、そのお子さまは親王にも王にもなりません。

世代が近いだけでは足りない。父方の血筋でつながっていることが要る。 皇族の身位は、この二つの条件がそろって初めて決まります。

家系の図で見ると、こうなります。

天皇からの世代で、呼称が変わる

天皇 → 子(皇子=親王)→ 孫(皇孫=親王)→ 曾孫〈三世〉()→ 玄孫〈四世〉()。世代が下るところで、呼称が切り替わります。


昔の皇室典範では、違った

ここが、深掘りポイントです。じつは、この「どこまでが親王か」という線引きは、昔と今で違います。

戦前の旧皇室典範では、皇玄孫(四世)までが親王・内親王とされ、五世以下が王・女王でした。つまり、親王の範囲が、今よりも広かったのです。

現行の皇室典範では、これが皇孫(二世)までにあらためられ、三世以下は王・女王となりました。親王の範囲が、以前より狭くなったわけです。皇族の範囲を、より近い世代に絞る形になった、と見ることができます。


現在の皇室では、誰が該当するのか

では、今の皇室では、どなたがどの身位にあたるのでしょうか。具体例で見てみます。

  • 愛子内親王殿下 ―― 天皇陛下のお子さま(皇子の世代)なので、内親王
  • 悠仁親王殿下 ―― 親王
  • 三笠宮家・高円宮家の女王殿下方 ―― 世代が下るため、女王

呼称が違っても、いずれも大切な皇族の方々です。呼び方の違いは、あくまで世代による区分であって、それ以上の意味ではありません。


なぜ、このような制度があるのか

そもそも、なぜ皇族を身位で区分するのでしょうか。

理由は、皇族の身分を整理するためです。誰がどの世代の皇族なのかを、制度として明確にしておく。そのための区分が、親王・内親王・王・女王です。

ここで、混同しやすい点を一つ。この身位は、皇位継承順位とは別の制度です。「親王だから継承順位が高い」というように、直接ひもづくものではありません。身位は身位、継承順位は継承順位。この2つは、分けて考える必要があります。


よくある誤解

最後に、誤解されやすいポイントを整理します。

  • 「親王のほうが偉い」 ―― 違います。親王・内親王・王・女王は、偉さの序列ではなく、世代による身位の区分です。
  • 「王は皇族ではない」 ―― 違います。王・女王も、れっきとした皇族です。

身位は、あくまで制度上の区分です。人格やご貢献の大小を表すものではありません。ここを取り違えないことが大切です。


筆者の考え

ここからは、筆者の考えです。

筆者は、「親王」「内親王」「王」「女王」という呼称は、皇族の優劣や序列を示すものではなく、皇室制度を整理するための身位として理解することが大切だと思います。

ニュースでは呼称だけが取り上げられ、「親王のほうが偉い」「女王は皇族ではない」といった誤解を見かけることがあります。けれど実際には、これらは皇室典範によって定められた制度上の呼称であり、人格や皇室へのご貢献を表すものではありません。

そのうえで、もう一つ書いておきたいことがあります。そもそも報道では、親王・内親王・王・女王という言葉が、ほとんど使われません。

代わりに使われるのが、「さま」です。「秋篠宮さま」「愛子さま」「悠仁さま」。皇族の呼称も、敬称も、どこにもありません。

これは、おかしいことだと筆者は考えています。

皇室典範は、ここまで見てきたとおり、第5条で誰が皇族かを定め、第6条で親王・内親王・王・女王という呼称を定めています。そして第23条は、敬称についてもこう定めています。

天皇、皇后、太皇太后及び皇太后の敬称は、陛下とする。 前項の皇族以外の皇族の敬称は、殿下とする。 ――皇室典範 第23条

つまり「殿下」は、慣習でも、へりくだった言い回しでもありません。法律が定めた敬称です。それを一律に「さま」へ置きかえてしまえば、法律が区別している親王と王の違いも、陛下と殿下の違いも、まとめて消えてしまいます。読み手に伝わる情報が、その分だけ減るのです。

丁寧に呼んでいるつもりで、実は制度をぼかしている。筆者には、そう見えます。法律に定められた言葉があるのなら、その言葉を正しく使うべきではないでしょうか。 このサイトで「陛下」「殿下」と書いているのは、そうした考えからです。

制度を正しく理解することは、皇室を正しく理解することにつながります。そして正しく理解するための第一歩は、正しい言葉を使うことです。こうした基礎知識こそ、皇室をめぐる議論を冷静に考えるための土台になる。筆者はそう考えています。


まとめ

  • 親王・内親王・王・女王は、すべて皇族。違いは天皇からの世代。
  • 現行の皇室典範では、天皇の子・孫は親王・内親王、曾孫(三世)以下は王・女王(第6条)。
  • 🔴 条文の条件は世代だけではない。「嫡出の」「嫡男系嫡出の」という限定があり、父方をたどって天皇につながることが要る(第6条)。
  • 旧皇室典範では四世(皇玄孫)まで親王だった。現行では二世(皇孫)までに狭まった。
  • 身位は「偉さの序列」ではなく、皇位継承順位とも別の制度。
  • 「親王のほうが偉い」「王は皇族ではない」はいずれも誤解。
  • 敬称も皇室典範が定めている。天皇・皇后・太皇太后・皇太后は「陛下」、その他の皇族は「殿下」(第23条)。報道で広く使われる「さま」は、この区別を消してしまう。

呼称の意味を知ると、皇室の報道がぐっと理解しやすくなります。


参考・出典